六甲・黒岩 10月

 
 同じ山に行きつづけると不思議なことに、お気に入りの場所というのがある。いろんな人がそこへ行くのに、それぞれが勝手に自分の場所だと思い込んでいるふしがある。実に楽しい空間である。

なかみ山展望岩にて

この山行きの立体地図


 それは、一般道からそれた場所にあるのだが、さりとて一般道からさほど遠くはな い。お気に入りの場所だけに、あまり人が来ないことが必須であり、また、なんとなくそのようになっているのが不思議である。それゆえ、そこでのんびりでき る時間がかなりの確率で保証されている。保証されているというのは、暗黙の了解があるからである。決して先着優先ではないが、後からきた人は先着の人が居 ると遠慮し、どこかへ立ち去る。または、先に来た人が長くいたときなどは、次の人に譲ったりもする。
 
天上川のいのしし                            岡本梅林の野菊

 ここは、動物の縄張りのような空間である。ひしめく人間社会のように、次の人が来たら必ず譲らなければならないという平等感に囚われた合理制がない。居たい人が居たいだけいる。山は元来、そういうものだろう。
 そこへ行ったという記録がほしいのなら、特定点を通過することが目的だから、人間社会的な規範で解決すればよいだろう。しかし、心の解放・開放を目的と している山行きならば、そうはいかない。まず、人がいなければ最高、いたとしても規範より、より自然な個々の人間関係で物事が解決される。そういう空間だ からこそ、お気に入りの場所となっているのである。

ミゾソバ

 それだからこそ、人があまり来なくて、飽きずに居られて、それでいて比較的簡単に訪れることができる場所である。そんな場所は、有名な山のてっぺんにあ るはずがない。お気に入りの場所というのは、展望・環境において最高とは認めてもらえないが、自分のための山行きだからそれでよい。自慢げに人に語るもの もないが満足度は高い。
 
保久良神社〜風吹岩
 
       アキノキリンソウ                                ヤマハッカ

 六甲山というのは実にへんてこな山である。地元の人は平然と受け入れているのだろうが、最高峰や有名な場所はだいたい車で行ける。稜線は車が大きな顔を して走り、人間がその排気ガスを吸いながら歩いている。ここはまさに都会の延長であり、登山者もそれを違和感ないようだ。有名地・六甲山を歩く。自然に分 け入るというのではなく、手の加わった場所を歩くのだから、ここでは登山者と呼ぶより登山客といった方がよさそうである。登山客は誰かの計画の中で踊って いるのである。
 
魚屋道展望岩にて

 また、六甲山上の台地状の主稜線には多くの会社等の保養施設が立ち並び、山全体が公園化している。稜線がそんなだから、谷水が飲めるはずがない。希釈されて、水道水以上にきれいな水もあるのだろうが、気味が悪くて誰も谷川の水を信用していない。

ヤマハギ

 道も道標も整備されているのでろくな地図を持たずに平然と歩いている。地図を持っていても読めない人がほとんどである。読めることの優位性がないから全 く支障がない。過激な言い方をすれば、販売されている六甲の登山地図でさえ、かなりいい加減である。道が整備されていることに胡座をかき正確さにかけてる ことが多々ある。場所によっては、地点をそれらしくつないだルート概念図見たいなものである。、それでも多くの人は支障がないということのようだ。なま じっか地図で地形を読み、記載されたルートどおりに歩こうとすると、逆に道に迷ってしまうという笑い話まである。それは、道が多すぎることと、登山道の変 更が多くあるという背景も否めない。都会地の山というものは、そのようなものである。
 
   コウヤボウキ                        フジバカマの仲間・ヒヨドリバナ

 そんな六甲山の中にも秘境がある。主稜ではなく、より都会に近い前衛の山である。標高はさほど高くはないが自動車道もなく、花崗岩質であるので雰囲気が よい。都会的ハイカーは少しでも高い主稜をめざすが、山好きはここにたむろしている。日本のロッククライミング発祥の地と呼ばれるロックガーデンもこの山 域にある。
 
黒岩への道で

 高座谷は魔の山域、同じような地形が広がり、処々に花崗岩の絶壁がある。地図なしに歩くと同じ場所をグルグル回ることだってよくある。また、そのような 報告をよく聞く。獣道、勝手に作った登山道が錯綜している厄介な場所である。それゆえ市販の登山地図にもこの山域の道は記していない。素人が行くと遭難の 可能性が高いからである。

黒岩にて

 そのようなところに黒岩がある。標高は約500m。テーブル状の花崗岩が山肌に 突き出ていて、その真ん中に格好の良い松が一本生えて居る。ほぼ水平だから、昼寝や炊飯にちょうどよいのだ。この真下が、魔の山域・高座谷である。目を上 げると六甲の主稜、西の展望、南の大阪市街地が望まれる。4〜5人で一杯になるが、お気に入りの山行きではそれが適性人数であろう。
 
アザミ

 今回は体調不良でしばらく山をご無沙汰していたA子さんのリハビリ登山。のんびり登って、ゆっくり休憩した。歩いたのか休んだのかわけのわからない山行 きであったが、非常に充実した山行きであった。好天に恵まれたのも幸いしたのだろう。当然のことながら、また行きたい場所である。
 
芦屋ゲートバス停                               紅葉が近い


ノコンギク




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