稲咲 12月

 
 六甲山の帰りの楽しみは、灘温泉(410円)に入り、稲咲さんに立ち寄り食事することだ。

夕刻の灘温泉(六甲道)

 下山後の時刻が決められると山中での時間調整に気を 使ってしまう。そんな追われるような山行きはあんまりしたくない。景色のいい場所があればのんびりしたい。だから、家内と出かける山行きは時間が実にいい 加減である。ただ、この店は夕方は5:30開店なので、それ以前に伺うことは気が引ける。無理を言えば対応してくれるのかも知れないが、そんな偉そうなこ とをしたくない店。だから、いつも下山時刻がほぼ確定してから予約する。小さな店だからすぐ満員になる。それはそれで、そうだったら仕方がない。それは山 の天気と同じだと最初から割り切っている。

しめさばとづけマグロ

 誠実で丁寧。主人も奥さんも客までもが、そんな雰囲気 を醸し出しているのが、ここ稲咲なのだ。店に入ると注文もしないのに小鉢がでてくる。みんな酒に合いそうなものばかりである。当初、寿司を食べに来たので 少々面食らったが、今ではどんなものが出てくるのか楽しみでもある。写真を撮り損ねたが、今回は最初にカボチャの煮物が出てきた。いい味を出しているの で、いつも汁まで味わってしまうほどだ。

ウナギ

 また、寿司は一貫ずつというのが主人の主義である。一 貫だけ出すというのは面倒だと思うが、それぞれが実に丁寧な仕事で、食うよりも見とれてしまうほどだ。丁寧な仕事をする分、注文してから口に入るまで時間 がかかる。その間隙を補うかのようにいろんな鉢が出てくる。今日の2番目は牡蠣鍋であった。写真を撮るあっというまに家内が牡蠣を食ってしまっていた。
 
牡蠣と豆腐の鍋物(牡蠣を少し食べてから)                       シマアジ      .

 どれもこれもうまいので、今日は全品を握ってもらおうと思ったが、全品となるとどうも食いきれそうに ない。それで、比較的重複する味のネタを外し、握ってもらうことにした。それでも数えると21種類になった。食えるか心配になってきた。そこは主人も心得 たもので、シャリを小さめにしてくれている。
 
剣イカ                                        ヒラメ

  ネタによって、食い方を教えてくれる。最上の状態で食べてもらおうとの主人の心が伝わってくる。うまい!! 胃袋が寿司バージョンになっているのに、今度は主人がわざわざ宮崎から取り寄せた地鶏のたたきを出してくれた。
 「どちらで食べていただいてもいいですよ・・・・」とポン酢と山葵が出てきた。山葵は主人が考案したもので、すりおろした山葵に山葵菜の茎を和え、香り 付けに柚子胡椒をわずかにふったものだという。ツンと辛いが独特の風味がある。元来、鳥は好みでないが食ってみた。こりこりとした食感、特製の山葵を載せ ポン酢でいただくといい味だ。家内は鳥で入院した経験があるのでもっぱら、添えられた野菜を食っていたが、この特製山葵が気に行ったようで、主人から作り 方を聞いてメモしていた。

宮崎の地鶏のたたき

 なおも寿司を食いつづける。予約の客が5人ほど入ってきた。この店の常連さんらしいがなかなか行儀のよい人たちだ。急に店が忙しくなってきたようで、こちらの寿司が滞っている。

サーモン

 次に出てきたのが蒲鉾だった。長崎の蒲鉾で、全部が魚のすり身だという。その中に野菜の入った蒲鉾は実にいい味だ。玉ねぎの入ったものは甘く、こんなのは初めての味だ。

長崎の蒲鉾(少し食べてから撮った)

 少し寿司が滞っているので、こちらのことを忘れているのではないかと疑った。しかし、心配は無用。こちらの腹の膨れ方を考慮しているかのようであった。さすればゆっくりいただく。食う速度と消化速度が同じように食えば、永遠に食いつづけることができるはずであるからだ。
 
イクラ                                          アナゴ


牡蠣

 ここに表示した寿司と実際に食った寿司 とは順番が同じではない。いえることは、どれも満足できる味だということ。ゆっくりでも腹がかなりふくれてきた。次はイカのヌタである。ネギ、ワカメに 炙った油揚げを細く刻んで入れてある。考えてみれば酒がうまそうな料理ばかりである。隣の客がうまそうに銘柄で酒を注文しているのが頷ける。気まぐれで寿 司を食っている家内は、茶碗蒸しを注文している。「時間がかかりますけど・・・」といわれたが、時間がけでこの店へ来たことはない。1時間以内で出られた 試しがないからだ。

イカのヌタ

 
茶碗蒸し                                        貝柱

 寿司のほかにこんなに小鉢を食ったのだから腹も膨れて当然である。主人は忙しそうにしているし、寿司 も出てこない。そっと奥さんに「私の寿司忘れているのでは・・・・」と聞いてみた。「多分そんなことはないと思うけど・・・・・」かなり他人事のような返 事だ。誠実な主人だから忘れるはずがないと言う顔とおとぼけが入っているのだろう。

タイ


カズノコ


 うまいものは食べてもらう。そんな感じがこの店の特徴のような気がする。
「ふぐの白子です。」
実は写真に撮るのを忘れていたが、先ほどメニュにないタラの白子の握りが出た。家内はこの白子が大好き。是非食いたいというので回してやったが、あとから考えると惜しいことをした。もう一貫注文すればよかったのだ。
「ふぐの白子は少し固めですよ」
鳥に続いて怖いものが出てきた。ままよ!!と食ってみたら確かに食感はやや固いがうまい。家内の好きそうな味でもある。寿司を全部平らげることに支障がないよう、ふぐの白子の方は家内に任せた。

ふぐの白子

 次は赤貝、むき身ではない。その場で開いてから握ってくれるのだ。以前、職場の近くの店でも赤貝を食ったが、「一個あければ三貫取れるので」といつも三貫出てきた。ここでは二貫仕上がって出てきた。独特の生臭さがうまいのだ。
 「これもどうぞ。うまいですよ。」
内臓を炙ったものだ。少し苦味のある貝独特の磯の味がする。これも好きな味だ。

赤貝

 かくして、一応注文したものは全部食ったが、まだ食っていないものがあるので気持ちとしては食いたい。玉子やタラコ、中トロ巻き、かんぴょう巻き、ウニ湯葉・・・・・それらは次回としよう。
  最後に果物をいただいてから勘定してもらうのがここの礼儀。この間、開店の5時半から8時半過ぎまで約3時間食いつづけていたことになる。しかし、不思議 と食いすぎた感じはしない。ここではゆったりとした時間が流れ、しゃべりながらくつろぎ気分で食っているからか、値段が安いからなのか、実に不思議だ。
 
ウニ                                          果物


 途中常連さんが顔を出し、新潟に行っていたからと主人に土産を渡していた。先日といっても随分前であ るが、ここで会った人だった。こちらも声を掛け挨拶をした。とその人は一旦店を出て行き、常連でもない我々にも土産をくれた。思わずのことに驚いたが、店 の奥さんも首を立てにふっていたので、ありがたく頂戴した。ここはそのような人たちの醸し出す空間らしい。
 帰りの電車の中でデジカメを確認したら、撮影せずに思わず食ったものがいくつもあることに気づいた。残念!! 六甲を15時ごろ下山したはずなのに、家についたのは22時を回っていた。最後まで楽しい一日であった。



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