春節 in 香港樓


 「中国からの観光客の団体で一杯ですから少々お待ちください。」
中国の人たちは日本まで観光に来ていて、なぜわざわざ中華料理を食べなくちゃならないのだ。誰もが感じる素朴な疑問である。それとも長い日本旅行で、そろそろ故郷の味が恋しくなったのか?

 「それはですね。中国の人は中華料理が世界で最高に美味しいと思っているからです。」
 なるほど、赤地さんがいうと最もらしく聞こえてくる。彼も久しぶりに日本に帰ってきたのに、宴会で中華料理店を指定してきたくらいなのだ。
 
人気中華料理店で待つ日本人

 満員。日曜日の昼頃の集合だから、このようなことはある程度の予想していた。特に空腹ではなかったので大丈夫だ。ここは赤地さんの贔屓の店でもある。
 記憶を遡るとここ香港樓で赤地さんを見送る宴を張り、彼は中国本土に向ったのだ。そのとき彼に大好きな羊羹を贈り、それを以って我々の上海旅行の切符の引き換え券としたのだった。

 送賢一使上海    赤地さんが上海に転勤することになったので見送るの曲
 錦城驟雨滌烟塵  難波に突然降った激しい雨が世の中の塵埃を洗い流してしまった
 餞宴燦燦臓腑滿  だから、今日の別れの宴は燦然と輝き、みんなの内臓も破裂しそうだ
 勸君更盡一碗茶  さあ、赤地さんもう一服のお茶を飲みほしてくださいよ
 贈羊羹將游豫園  羊羹を贈ることにしたので、あの有名な豫園で遊ぶ日がくるはずです
 

賢一を送るの会


 半分冗談のつもりであったが、私自身はそれから3回も上海を訪れることになった。今では公共交通機関だけなら、上海の地理は大体わかる。名勝豫園は迷路 のような公園。しかし、3回も行ったのだから中の建物の場所だけなら案内できる。そのはずなのに、前回も見落とした場所があるから不思議なものだ。旅とは そのようなもの、特に個人旅行とは、行ったという経験的な旅ではなく、知るという理解的な旅になる。それだからこそ楽しいともいえる。しかし、個人旅行で 困るのが言葉の壁だ。特に食事のときに困るのだ。だから、赤地さんの上海在住はなによりも心強いものがあったし、中国ならではという珍しくうまいものをた くさん食うことができた。
 
第3次上海下見旅行


 そんなことを思い出しながら、香港樓の戸口を見上げると面白いものが目に入っていた。いつもならさっと入って目にすることがないのだが、いかにも中国ら しい模様がついていた。絵ではない。合成した字だ。戸口でおしゃべりしていた女性たちもそれに気づいたようである。「寶」を招き、宝を載せたまま進 む・・・・という意味なのだろうか? 表意文字・漢字ならではの遊びがある。
 
「進・寶・招」の合成した字

 赤地さんが先に店に入り、なにやら上海で仕入れたものを飾り付けているようだ。入ると店は満員、我々は一番奥のいつもの席だ。この奥の部屋にも女性グループと家族の2組いる。以前はもっとゆったりしていたような気がする。
 すでに今年の干支の兎を机の上に並べてある。いよいよ宴の開始だ。先ずは飲み物。青島ビール、生ビール、お茶・・・・ここは中国風だから、お茶はもちろん有料だという。
 

  オードブルはクラゲ、鳥、豚、皮蛋、野菜。うまい。 赤地さんがオーナの城さんに事前に「少しでもいいからうまいものを」という注文をつけていたらしい。次に出てきたのは北京ダック。皮がパリパリでいい味を 出していた。大判の餃子の皮状のものに野菜と北京ダックをのせ、味噌を塗り巻いて口に入れる。これは、実に上等な味がする。さらに野菜のあんかけ、フカヒ レスープ、鮑のあんかけとつづく。
 
北京ダック

 「この味なら、これだけで3万円はするので は・・・・・」赤地さんが叫んでいる。なるほど上に薄く切った鮑がのっかかっている。上の鮑を1枚、そして下の方のものを自分の皿に取り分け食べる。やは り中華の鮑だ。下の方も鮑だった。「鮑は中国では高級食材だから一人一枚ぐらいかな?」なおも赤地さんがしゃべっている。
 心の中で、えっ、さっき2枚食ってしまったよ。私から取り始めたので、血圧が上がる思いだ。ようやくテーブルが一周した。よかったよ。まだ鮑があるでは ないか・・・・・。今度は安心して、再び頂いた。一緒に煮てあった椎茸もすごくいい味を出していた。
 
鮑 野菜のうま煮

 ここでは中国人になりきっている赤地さんがソース色の 液体を出してきた。紹興酒だという。以前に上海で飲んだ「太雕酒」よりはるかに高級だという。確かに黒糖にも似たまろい味をベースに複雑な味がした。古く て摩訶不思議だった。香でいえば「蘭奢待」。こう書くと、もうソムリエの説明は不要だろう。
 アサリのピリ辛目の味も良かったし、蒸し器に入っていた小籠包などの三種の飲茶もうまかった。
 
怪しげな酒                                 飲茶三種

 料理ももう終わり。炒飯が出てきた。うまいのもあったが日本風に完食したら、目の前にまた食べたはず の炒飯があるではないか。隣に座っていた赤地さんが自分の分を私に回してくれたよう。もうかなり腹が膨れていたが、残すのは日本人のもったいない精神。 で、それも完食。そのとき、中国の食文化を思い出してしまった。
 そうか、全部食べてはいけなかったのだ・・・・・・・
 半ば中国化した赤地さんが私に自分の炒飯をまわしてくれたのは、中国の接待の形だったのだ。彼は上海からさまざまな物品だけではなく、それに付随する異文化をも持ってきて、我々を楽しませていたのだ。
 
中華料理を異文化で食べる

 今回笑いが湧いたのは、元気が出るLV製品。怪しげな日本語の保証書も付いている。これは、オシャレな頭巾を作ってくれた畔山夫妻への贈り物だという。
 
LV保証書付き

 店で出されるデザートの他に、懐かしいだろうからと竜眼も運んでくれていた。レイシのような味で、上海の八百屋にブドウのようにぶら下げてあったくだものだ。皮を剥き、懐かしい味を楽しんだ。
 
懐かしき竜眼の味

 食べるものは食べ、飲むものは飲み、出てくるものはすべていただき、それでも話は尽きない。店の人が時間を告げに来た。もうそんな時間なのだ。写真を撮って店を出た。

春節の記念撮影


 それでもまだ話足りない気分。あ、忘れていた。これは春節Pwなのだ。来るときも金岩さんは大阪駅か ら日本橋まで歩いてきたそうだ。帰りは日本橋から難波まで歩くことにしよう。地理に詳しくない人は、勝手にお江戸日本橋から大阪の難波まで歩いたと思って くれるだろう・・・・・・・
 長い長が〜い歩きののち、ようやく難波に着いた。いまどき10人が一度に入れる喫茶店を探すのが大変。しかし、店の人が何とかしてくれた。お礼に全員が コーヒセットを注文することにした。腹が膨れているにもかかわらず、スーッと腹に収まった。長く歩いたからであろうか・・・・・・・・
 笑顔がこぼれる際限のないPwだった。

日本橋〜難波:完歩のあとで


 部屋の飾りつけもメデタク、あっというまに時間が過ぎた一日です。前菜、北京ダック、野菜あんかけ、鮑、アサリ、小篭、デザートどれもこれも絶品料理でした。

 あのウン十年物の紹興酒の味は今朝も未だ口中に残っています。それから、ドラえもんのポケット顔負けの赤地さんのブラック・スーツケース、次から次へと出てくる土産物に驚き、喜び、笑いの楽しいマジックショーの様でした。
 いつものことながら、彼の温かい心遣いに感謝、感謝です。有難うございました。

 実に楽しかったです。嫁ともども久しぶりの香港楼の皿々に大満足。そこへ密かに渡来した紹興酒古酒まで取り出され、上海を想い出しうなることしきり。
 卯年縁起物(含ルイヴィトン)も早速飾られております。

 上質の中国料理と、旨いお酒、楽しい語らい、豪華なおみやげ、堪能しました。ありがとうございました。 
 今日、頂いたレッドPを穿き、意気揚々と会社に行きました。なんとなく高揚した気持ちを押さえながら、じっくりと集中した仕事ができ、午後の眠気も無く、充実していました。 効果絶大です。 
 しかし、特別な事も無く20時ごろには帰りました。無事な帰宅に感謝しましょうと、家内ともども話し合っています。






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